馬主、調教師、騎手、生産者、育成者、厩務員、装蹄師、獣医師…競馬に携わる全てのホースマンの夢と言われるレースが、日本ダービーである。名誉あるレース、権威あるレースであることは、競馬ファンなら誰もが知っていることだが、日本ダービー馬として一目置かれ、持て囃される時間は驚くほど短いことはあまり知られていない。
是枝裕和監督の『万引き家族』が、カンヌ国際映画祭の最高賞のパルムドールを受賞した2018年。ディープインパクト産駒のワグネリアンが、日本ダービーに優勝した。「ダービー馬はダービー馬から」の格言を体現した4頭目のディープインパクト産駒となった。
ワグネリアンは、2018年の第85代日本ダービー馬として出走した神戸新聞杯に優勝したものの、その後2年間も、勝ち星から遠ざかっている。ワグネリアンのような日本ダービー馬は、決して珍しい存在ではない。名誉と権威を手に入れた日本ダービー馬が、その名誉と権威を保ったまま引退することは、簡単なことではないからだ。
リーディングサイヤーとして長期政権を続けてきたディープインパクトの産駒とあって、種牡馬として馬産地に迎えられるとしても、ディープインパクトの血は飽和状態、という現実が待ち受けている。血統的に活躍の余地は限られている。種牡馬としての居場所を確保するためには、2つ目、3つ目のG1タイトル奪取は、ワグネリアンにとって必須条件と言えるだろう。
2019年3月31日の大阪杯から2020年6月28日の宝塚記念まで、ワグネリアンが出走したG1・5レースの牝馬をベンチマークとして定点観測してみた。レースを重ねるごとに日本ダービーとして輝きを失っているが、レース結果からワグネリアンの女癖を見て取ることができる。
<ワグネリアンが出走した3歳秋以降のG1レース>
2019年3月31日 第63回大阪杯
2枠02ワグネリアン ☆3着
注)牝馬の出走なし
2019年10月27日 第160回天皇賞・秋
1枠02アーモンドアイ ★1着 牝4
3枠05アエロリット ☆3着 牝5
7枠14ワグネリアン 5着
2019年11月24日 第39回ジャパンC
1枠01カレンブーケドール ★2着 牝3
2枠02ワグネリアン ☆3着
2020年4月5日 第64回大阪杯
4枠04ワグネリアン 5着
5枠05ラッキーライラック ★1着 牝5
8枠12クロノジェネシス ★2着 牝4
2020年6月28日 第61回宝塚記念
4枠07ワグネリアン 13着
6枠11ラッキーライラック 6着 牝5
8枠16クロノジェネシス ★1着 牝4
牝馬が出走していた2019年天皇賞・秋、ジャパンC、2020年大阪杯、宝塚記念において、ワグネリアンは、出走した全ての牝馬に先着を許している。アーモンドアイ、アエロリット、カレンブーケドール、ラッキーライラック、クロノジェネシスの躍動する尻は、ワグネリアンを骨抜きにするほど魅力的なのだろう。ワグネリアンが出走する秋のG1シリーズが待ち遠しい。
text=Koiwai Hiroshi(小岩井弥)
1962年岩手県生まれ。競馬、数字選択式宝くじLOTOなど、一攫千金をテーマとするジャンルの執筆活動に携わる。主な著書に『LOTO6 4億円確変宣言』『LOTO6 セット球+枠番消去法W攻略』(メタモル出版)、『図解ロトセグシートでロト6が簡単に当たる本』(笠倉出版社)などがある